短期筋の利益確定売り
オーステナイト系は非磁性体で低脆性がない。オーステナイト・フェライト系、フェライト系、マルテンサイト系、析出硬化系は磁性体(強磁性体)である。ただし、オーステナイト系ステンレスの一部は、加工を繰り返すことで組織がマルテンサイト化し、磁性を帯びることがある。
ステンレス鋼の耐蝕性能は、基本的にCrの含有量で決定され、12-26%の範囲で含まれる。その他、Mo・Ti・Nbなどの添加元素も、耐蝕性の向上に寄与している。6-22%の範囲で含まれるNiも耐蝕性に貢献するが、オーステナイト相を固定化するのがもっとも重要な役割である。
700℃前後の焼鈍し程度の加熱でクロム(Cr)が炭素(C)と結合して炭化物が粒界に析出することがあり、クロムの減少によって耐蝕性が損なわれることがある。これは粒界腐蝕と呼ばれ、ニオブ(Nb)やチタン(Ti)が少量添加されていれば、クロムの前にニオブやチタンが炭化物となるために粒界腐蝕を起こさずに耐蝕性が保たれる。このようなステンレスは安定型ステンレス・スチールと呼ばれる[1]。
JIS G 0203「鉄鋼用語」の定義によれば、ステンレス・スチールは鉄に約10.5%以上のクロムを含ませた合金を指し、しばしばニッケルも含まれるとされている。
ステンレス鋼は、主にその用途と求められる意匠性によって様々な表面仕上げを施して使用される。表面処理の中で、意匠的に鏡面に磨いたもの、ヘアライン加工したものは建築物の中で用いられることがあり、素地での仕上げとなる場合は傷を保護するビニールなどの皮膜が貼り付けられていることが多い。代表的なものは以下のとおり。
名称 特徴
No.1 つや消しの白っぽい表面で、少しザラついた仕上がり。スラブを加熱してロールで延ばす熱間圧延の後、表面を酸で洗い、汚れ等を取り除いたもの。構造部材やリロール母材などに用いられる。製造上1番目(熱間圧延)の工程で出来るため「No.1」と表す。流通では「白皮品」「酸洗材」などと呼ばれる。
2D 冷間圧延後、焼鈍と酸洗を行ったままの仕上げで、表面は銀白色の鈍い光沢。比較的柔らかいため、深絞り性を要求される場合に用いられるが、一般にはほとんど流通しない。
2B 2Dの後に、適度な光沢を得られるようにスキンパス(調質圧延)を施した仕上げで、ステンレス鋼ではもっとも一般的。製造上2番目(冷間圧延)の工程で出来、仕上げがブライト(光沢のある)状態のため「No.2B」と表す。
BA 冷間圧延後光輝熱処理とスキンパスを行った、きれいな光沢のある仕上げ。意匠性を求められる部材に用いられることが多い。2B仕上げに次いで一般的。
No.4 2BまたはBAの素材に、F180前後の研磨加工をした仕上げ。研磨材としてはもっとも一般的なもので、厨房や建材用などに幅広く用いられる。
ヘアライン (HL) 2BまたはBAの素材に、おせち
の毛状の細い研磨目を連続してつけた仕上げ。エスカレーター側面などでよく見かける。
No.8 2BまたはBAの素材を#800程度のバフ研磨した、高い光沢を持つ鏡面仕上げ。鏡や装飾金具などに用いられる。
タンデム仕上げ(JIS規定外) 一部フェライト系ステンレス特有の仕上げで、冷間圧延時にステンレス専用の圧延機ではなく、普通鋼用の圧延機を通すことで、高い生産性を達成する。表面性状を問わない自動車排気系部品などに用いられる。
ステンレス鋼の防銹性は、表面の不動態皮膜に依存するため、これが還元により破壊される要因に注意を要する。
オーステナイト系ステンレス鋼は硫化水素や塩化水素などの塩化物イオンを含む高温高圧環境に曝されると、水素脆化による応力腐蝕割れを起こすことがある[2]。
ステンレス鋼は純鉄に比べはるかに酸化されにくい(電位が高いという)ので、他の鋼や異種金属と接続すると電蝕を起こす。ステンレスの流しに空き缶やヘヤピンをおくと極端に錆びるのは、このせいである。電気温水器はステンレスであるから、鉄管で接続すると約10年で鉄管が破裂する。
ステンレス鋼においても他の金属と同様、錆は錆を呼ぶ。錆は不動態皮膜に比べて遥に不安定であるため、水道水などに含まれる鉄錆が定着することが要因となって、錆が進行する(もらい錆)。
ステンレス鋼は普通鋼に比べて強度が高いが、構造用に用いるとクリープを起こすことがあり、塗装工事
を要する。また、オーステナイト系ステンレス鋼の一部は特定の環境下で応力腐食割れ (SCC) を起こすことがあるため、それを嫌う場合はフェライト系ステンレス鋼を用いるべきである。
特にオーステナイト系ステンレス鋼は熱伝導性が低い上に熱膨張率が大きいため、高温環境下での使用には、設計上十分に注意する必要がある。また、切削や溶接時にも独特の温度管理が必要になる。なお、450℃近辺では、鋼種によってはCrが析出することで耐食性や機械性能が低下することがあるので、この温度域での使用は注意を要する。
オーステナイト系ステンレス鋼は伸びがよく、絞りや張り出し成形性も高いため、複雑な形状を作ることができる。加工硬化があるので、これを留意した設計をする必要がある。フェライト系ステンレス鋼はオーステナイト系に比べると伸び性能が劣るため、特に張り出し成形には注意が必要となるが、加工硬化は比較的小さい。なお、マルテンサイト系ステンレス鋼ではこうした加工は難しい。
ステンレス鋼は全般的に切削性が悪く、旋盤やマシニングセンタなどで切削加工する場合、鉄や銅、アルミニウムと比べ、被削面の塑性変形による加工硬化が大きい。そのためセレンやリン、硫黄などを加えた快削材も利用される。
オーステナイトとフェライトの二相組織を持つ二相ステンレス鋼では強い耐蝕性を持つが、400℃以上の環境では脆化を起こすことがあり、使用環境の温度には注意が求められる[1]。
ステンレス鋼はそれを専門に扱う販売業者が存在して、市場を形成している。現在こうした市場から購入できる鋼種(店売り品種)は、数多くあるステンレス鋼種のごく一部、SUS304/304L、SUS316/316L、SUS430程度であり、従来は市中品の60%前後がSUS304で占められていた。また、メーカー規格品の一部は、系列の販売業者が在庫していることがある。これ以外の鋼種は基本的にメーカーで都度生産する事になるが、生産には一定のロットが必要となる(少なくとも7t以上)。また、2B・BA・No.4・HL以外の仕上げは、2B材を専門業者で研磨した製品(流通研磨品)となることが多い。
ステンレス鋼の流通形態は紐付きと店売りとに分かれる。 紐付きとはステンレスメーカーが最終ユーザーまで把握する形態である(メーカー→商社→最終ユーザー)。紐付き商売ではメーカーと最終ユーザーが直接価格交渉・納期調整を行うケースが多い。 店売りとは問屋が介在し、在庫販売及び切断等の加工を施しユーザーの小ロット・短納期というニーズに答えるべく機能する形態である(メーカー→商社→問屋→各ユーザー)。
日本市場のSUS304は、最近では韓国製など予備校
の輸入が増加しており、一定の地位を市場で確立している。このため、必ず国内材を用いたい場合は、注文時にその旨を明示する必要がある。一方でこれ以外の鋼種はまだ国内材が大半である。
2006年からの原料ニッケル価格高騰などの影響で、特にオーステナイト系ステンレス鋼の価格は、1年間で2倍以上に上昇した。このため(Niを含まないため)、比較的価格の安いフェライト系ステンレス鋼へ鋼種変更する需要家が増加している。一般にフェライト系ステンレス鋼はSUS304に比べて耐食性に劣ると言われているが、メーカー各社は以前から耐食性を向上させたフェライト系ステンレス鋼を開発しており、2006年秋以降急速にその需要が高まっている。 その例として、新日鐵住金ステンレスが開発したNSSC180(旧YUS180)や、最近ではJFEスチールが開発したJFE443CTという新鋼種がSUS304代替ステンレス鋼として注目を浴びている。
欧州では11世紀末から170年に渡って何度も派遣された十字軍の帰還と共にもたらされたダマスカス剣の製造方法が解らずにいた。ダマスカス剣の鋼はインドで作られたウーツ(wootz)鋼が中東までペルシャ商人によって運ばれ製作されたものであった。この剣にはダマスク(Damask)と呼ばれる日本刀の「錵」(にえ)と同様の渦状の紋様が刃に浮かび上がっていた。
14世紀にはイギリスでも鉄鋼によって刃物類が生産されるようになったが、当時は加熱技術が未熟なために、鍛鉄や錬鉄と呼ばれる低炭素鉄の棒を木炭中で2週間に渡り加熱し続けて融点以下の雰囲気中で炭素をこの鉄棒素材に浸炭させることで、表面と内部で炭素濃度が異なり、表面が泡立った泡鋼(あわこう、Blister)と呼ばれる鋼鉄素材を得ていた。
18世紀に英国がインドを植民地化すると古代からのインドの鉄鋼技術に関心が高まり、特に旧デリーのイスラム寺院の庭に立つデリーの鉄柱の驚異的な耐候性とウーツ鋼に興味が集中した。
ドイツ系イギリス人の時計職人、ハンツマン(Benjamin Huntsman、1704-1776)は金属バネの品質の不満から自ら良質の鋼の開発を始め、1740年に新型溶解炉や燃料用コークス、耐火ルツボ、ガラス粉末の使用などを新たな技術を開発して「ルツボ鋳鋼法」を作り出した。これにより鋼は英国でも量産出来るようになったが、まだダマスカス鋼には劣っていた。
ロンドンの刃物師、ストダート(James Stodart、1760-1823)は正確な焼戻しによってウーツ鋼の硬度をさらに高め、英国製造の鋼よりウーツ鋼を輸入すべきであると提案した。東インド会社はインドのウーツ鋼を英国へ輸入し、ストダート自身も英国のルツボ鋳鋼技術の向上に取り組んだがウーツ鋼を越える製品は得られなかった。
この頃、フランスのヴォークラン(Louis Nicolas Vauquelin、1763-1829)は当時「シベリアの赤い鉛」と呼ばれていた鉱物から新種の灰色の金属を発見し、論文『シベリアの赤い鉛とそれに含まれている新しい金属の研究』を発表し、クロム(Chrome)と命名した。